レジェンド&イリュージョン

梅雨の晴れ間、京都。
「エグいでー俺のBOX、伝説と幻でいっぱいやでー。」
と、下校途中の小学生の夢のある謎めいたお話を耳に入れながら
向かう先は三条釜座。
釜座町は平安時代末期から鋳物師が集住し、特に室町時代から現代においては
芸術性の高い京釜を産み出してきたことで知られています。
訪れたのはこの地で7代続く釜師さんの工房。
先日、以前よりお世話になっている煙管職人さんからいくつか道具をお譲りいただけるとの
お話をいただき、この日はこちらでお仕事をされているこのことで訪ねて行きました。
少し緊張しながら門扉のチャイムを鳴らすと、ご当主が気さくにお出迎えくださり
工房の中をご案内していただきました。


訪れた時はご当主が鉄瓶に漆の焼き付け、煙管職人さんがお茶席で使う煙管を製作している
最中でした。
ご当主が今まで作業していた鉄瓶が一通り終わると、次の鉄瓶に取り掛かりました。
7代目の色としてご自身が作った色を見せていただきました。

深い鈍色で、どことなく憂いの帯びた表情もある素敵な色でした。
また煙管職人さんの手さばきも相変わらず鮮やかなものでした。
一度に二人のプロのお仕事が見れるなんて贅沢だなぁと思いながら
飽きもせず見ているとあっという間に時間が過ぎていきました。
さすがにこれ以上長居してしまっては(既にだいぶ長居してしまっていたのですが......)
ご迷惑かと思い、道具の引き取りの打ち合わせをして帰途につきました。
家までの道を歩きながら、今日の出来事を振り返り考えていました。
数百年間受け継がれてきた技術を持って作られた現代の工芸美術品は
数百年前のものを目にしていることになるのか、いや、その時々に
新しい意匠や試みがあるのだからそうとも言い切れないのかな.....
なんてことを思いながら、ふと往路で聞いた小学生の話が浮かんできました。
そうか、レジェンド&イリュージョンなのだと。
続く